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【ラ・サール56期 吉永vol.1】flixy売却の舞台裏:売れないシード期に何を考えてどう行動したのか?

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皆さん、お久しぶりです。ラ・サール55期の八尾です。
コロナの関係で、長らく開催できていなかったラ・サールベンチャー勉強道場(通称ラサベン)ですが、今回オンラインで再始動することになりました。

まずは、今までやってきた会の振り返りですが、「ラ・サール生によるラサール生のための世界最強のベンチャー道場」というコンセプトをもとに、今までも様々なラサール卒業生でベンチャーに携わっている方々に話を伺ってきました。
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世代間を超えても、聞きたいことを気軽に聞けるという、ラサールならではの距離の近さを活かして、また勉強道場を続けていきたいと思います。

今回は、flixy社CEOの、ラ・サール56期 吉永くんに「flixy社バイアウトの舞台裏」ということで、どのようなことを考えて起業して売却に至ったのか詳しく聞いていきたいと思います。
それでは、吉永くん、自己紹介からお願いします。

 

吉永
よろしくお願いします。私は、鹿児島生まれで自宅からラサール中・高に通っていました。現役の時、東大理三を受けましたが落ちまして、一浪して、慶應医学部に入りました。

卒業後、2年の研修医の後に、医師三年目でフリクシー社を起業して、2020年3月にJMDCに売却しました。

今は、JMDCの子会社flixyの社長として引き続きサービスのグロースと、あと、JMDCの投資部にも入り、企業を買う側として仕事しています。臨床は週1で続けています。

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八尾
ありがとうございます。事業についても簡単に説明してもらってよろしいですか?

 

吉永
はい。メルプWEB問診という、医療機関向けのWEB問診サービスを提供しています。
クリニックを受診すると、A4 1枚の紙の問診票を渡されると思いますが、その内容をデジタルでWEBでクリニックに来る前から患者さんは記入できて、医師側には事前に患者さんの症状がわかるというサービスです。クリニックの診察前の業務効率化のサービスです。

現在は、月40件程度、医療機関の新規導入があり、約400クリニックに導入されています。
ただ、日本のクリニックは約10万件ありまして、その中でWEB問診という比較的新しい概念のサービスを導入しているところは競合も含めて1000社あるかないか程度ですので、まだまだ1%程度と市場をとれていない段階です。そのうちの1社とバチバチやり合っている感じですね。

 

八尾
99%は紙問診を使っているということですか?

 

吉永
そうだと思います。電子カルテというPCで診察録を残しているクリニックが全体の40%ですので、紙問診、紙カルテで運用しているクリニックがほとんどです。

 

八尾
なるほど、そういう規模感なんですね。
99%のブルーオーシャンの市場を2社で攻めるということですか?

 

吉永
最近は他にも新規参入の企業が増えてきています。また、99%全部を取れるとは思っていません。ご高齢の院長先生など、こうしたデジタルのサービスの導入に抵抗のある先生もいらっしゃいますので、実質のパイはもっと小さいと想定しています。

メルプ強みは2つありまして、1つは医師側に問診の管理画面を渡して自由にカスタマイズできるとしているのはうちだけです。あとは、Bluetoothを使った電子カルテへの問診の取り込みを行なっていまして、連携している電子カルテの種類の多さも強みです。

 

2019年12月くらいから売却を本格的に検討し始めて、何社か当たって最終的にJMDC社に決めました。
JMDCの投資担当の人にお会いしたのが3/1で、クロージングが3/23でしたので、約3週間と非常に早く決まりました。

通常ですとMAは半年程度かかることが多いです。あとは、MAの際は仲介会社を挟むことが多いですが、今回私の場合は仲介会社を挟まず、私が直接買い手の企業と交渉した点はレアケースかなと思います。

JMDCはマザーズの中で時価総額かなり大きい会社でして、日本の医療データを扱っている会社で最大です。

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八尾
ありがとうございます。
自分の会社をいくらで売るかに関しては、仲介会社と話し合いながら決めていくものだと、私は思っていましたので、自分で決めて直接交渉されたというのはとても気になりますね。後ほど詳しく聞きたいと思います。

視聴者の方も適宜どんどん質問してくださいね。
吉永くんには事前に人生グラフを作成してもらいましたので、それをみながら質問していきたいと思います。
まず、起業して売上0のシード期は何を考えていたのですか?また、今のメルプのアイデアはどこから生まれてきましたか?

 

 

吉永
今回のサービスは自分の原体験の課題から来ています。
自分が外来で患者さんを診察しているときに、紙の問診票が届いてきて、医者が電子カルテに転記してから患者さんを診察室に呼ぶという流れでとても非効率だと感じていました。

自分が課題に感じていることは、他の医者も課題に感じているだろうという仮説からサービスを作り始めました。

 

実は、今回のサービスの前に、お薬管理のIoTサービスをやっていましてそちらは失敗した経験がありました。

自分もCTOの片岡もプログラムを書けるのは強みではありますが、コードを書けるがゆえに、仮設検証をあまりしないままプロダクトアウトになりがちで、作ってから顧客にぶつけて失敗したということが多かったので、今回はそれはやめようと思い、自分感じている課題から探しました。

 

八尾
面白いですね。意気揚々と開発して提供して失敗した、受け入れてもらえなかった具体例がありますか?

 

吉永
そうですね。メルプの前は、高齢者向けにお薬の飲み忘れを防ぐ、お薬カレンダーを開発していました。
時間になるとお薬が入っているポケットが光って、音が鳴って飲むべきお薬を教えてくれるというサービスでした。

お薬カレンダーにかなりの電極やセンサーをつけまして、徹夜もしながら3ヶ月くらい開発しましたが、いざ、認知症のおばあちゃんのところで使ってもらったところ、電池がもったいないという理由で、翌日には電源ごと引っこ抜かれまして、全然データ取れてないとなり、これ無理だなというエピソードはありました。

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(手作業でハンダゴテを使いながら電極やセンサーをつけて、開発を終えてから提供)

また、その実証実験したところが香川でして、自分たちは東京に住んでいましたので、すぐに電源をまたつなぎに行くというわけにもいかず、結構詰んでしまいましたね。

自分の課題ではなく、推測した高齢者の課題だったので結局プロダクトが刺さらなかったという印象です。
あとは、結構大掛かりなハードウェアになってしまい、ビジネスモデルを考え切れていなかったので、費用対効果が合わず投資家から収益性を質問された時にしっかり答えられなかったです。


八尾

なるほどですね。サービスが売れない時期に進めた改善として、「機能の絞り込み」について詳しく話せますか?

 

吉永
創業期の2016年はLINEを使ったチャットボットサービスが流行った時期でして、その時もプロダクトアウトになりがちで、LINEのチャットボットでクリニックの予約と問診ができたら面白いのでは?という仮説でサービスを作り始めました。

これも失敗なのですが、事前ヒアリングやプロトタイプで顧客に見せるということはせずに、しっかり作り上げてから顧客にぶつけたところ、刺さらなかったですね。

 

実際は、開業される先生は5,60代の先生がが多く、LINEは息子娘から言われてプライベートで仕方なく使っているけれども、クリニックの予約などパブリックで使うイメージはないことと、当時はタイミングが悪く芸能人の個人情報流出事件があり、LINEは韓国のサーバーだからセキュリティが危険だという思い込みも多かったのが原因でした。

そこで、LINEは便利だけれども、クリニックとは相性が悪いのでWEBに切り替えるという選択をしました。

 

あとは、予約や問診、アンケートなどなんでもできるよと最初はしていたのですが、多機能すぎてユーザーが理解していない感じがあったので、選択と集中で問診のみに絞り込みました。これは結果的には正解だったと思います。


八尾

なるほど。問診に絞り込んでいったと。予約機能は外したということですね?

吉永
そうですね。予約は、当時すでにさまざまなプレーヤーがいたのと、あとは、自分の医師としての知見を予約では活かせないと思いました。
問診ですと、患者さんの回答を裏で医療用語に変換して、医師が見やすい形で医師側に届けていまして、私の知見が活きると思い、問診に絞りました。


八尾

なるほど。確か、LINEでプロダクト開発されていた時に、私一度体験したことがありまして、ユーザー向けには分かりやすい質問と回答が並んでいた印象があります。その内容が裏で変換されて医師に見やすい形に届けているということなんですね。

それは吉永くんはドクターだから、それでドクターが見やすい言葉に変えるということができたということですね。なるほど、それは面白いですね。

あと、顧客に集中とありますが、これはどういうことですか?

【ラサール56期 吉永vol.2】flixy売却の舞台裏:上場や資金調達ではなくどうしてMAを選択したのか? に続く。

 

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