現王園
私の方からは、メルカリのUSの事業について話をします。
まず、自己紹介ですが、私は新卒で、インド最大のIT企業、TATA Consultancy servicesに入社しました。
入社後、半年間インドでプログラミングの研修を受け、その後日本に戻ってきて、日本のお客様とインドのエンジニアの橋渡しをするブリッジエンジニアとして働いていました。
その後、ビズリーチに転職し、新規事業の部署でやれることはなんでもやりました。
当時作っていたプロダクトがTVCMを打つことになり、デジタルマーケに結構な予算かけてやることになって、誰かマーケティングをやって下さいということで、私がデジタルマーケを担当することになりました。
ゴリゴリ人力で回すほどの人がいなかったので、ひらすら自動化、効率化をしようと、データをいかに広告のプラットフォームに送って最適化するかを頑張っていました。
Google I/O 2017のセッションで、日本語のロゴと共に事例で取り上げてもらったときは泣きそうになりました。
その後、メルカリに転職して、メルカリUSのデジタルマーケティング、特に、リターゲティングを担当しました。データを広告プラットフォームと連携して広告を最適化し、メルカリを使い始めたけど離脱した人を呼び戻したり、アクティブでもリタゲあてると売上上がるのかを実験したりしてました。
半年くらい携わるうちに、リターゲティング広告にお金をかける前に、プロダクト内でもっとやることあるのでは?と感じ始めました。
デジタル広告の世界は、GoogleとFBが機械学習を活用して、ここ5年くらいでかなり賢くなっています。メルカリなど広告を使う側からすると、データだけ送っておけば、Google, FBがよしなにデータを活用してパーソナライズして広告を配信してくれます。
一方で、広告以外のユーザーとのコミュニケーション、例えばプッシュ通知やメール、アプリ内のコミュニケーションに関しては、まだまだマニュアルでやっていて、全然パーソナライズされておらず、全然デジタル化されていないなという印象でした。
そこで、当時の上司に、「広告にお金をかける前に、メルカリの中でのユーザーとのコミュニケーションをパーソナライズ化していきたい」と相談したところ「それは、やったらいいんじゃない。」と言われまして、エンジニアをつけてもらって、0からCRM(顧客管理)領域のプロジェクトをやり始めました。
吉永
入社してから、自分から手を挙げて意見したということですね?
現王園
そうですね。
吉永
周りもそういう人が多いのですか?
結構、大企業ですと上から言われたことをそのままやる人が多いイメージはありますが、メルカリでは、みなさんボトムアップで意見してサービスを改善していくという感じなのでしょうか?
現王園
それでいくと、会社のフェーズの違いがあると思いますね。
メルカリの中でも、USは日本と違って当時はかなり初期の段階で、人数も少なかったです。ですので、自分が出せるインパクトの大きさはまだまだありましたし(今もそうですが)、自ら意見すれば、理にかなっていればトライしようという文化ではありますね。
CRMに移動してから1年半くらいでグロースCRMの基盤を開発し、チームもUSで出来たタイミングでアメリカに移住しました。今移住して1年半くらい経ちました。
グロースに関して少し触れたいと思います。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実はアメリカではグロース(会社をいかに成長させるか)が手法として確立されています。
FBが一番初めにグロースチームと言われるチームを作ったと言われていますが、グロースエンジニアと呼ばれるエンジニアもいますし、グロースを専門として生業にしている人達もいます。
例えば、Pinterstという、画像をボードに「ピンどめ」してブックマークできるサービスがありますが、そこではグロースチームが100人以上いる組織になっていたり、いわゆる成長している企業にはグロースチームと呼ばれる専用の組織があります。
グロースチームは、マーケティング、エンジニア、データ解析掛け合わせてサービスを成長させるために何でもやりますということで、広告やCRM、レコメンドの開発を行っています。
今はCRMの領域を超えて、「継続的に非連続的にグロースするにはどうすればいいか?どうやってチームを作るか?」に関心があって、こっちにグロースのミートアップに参加して学んでいます。
こちらは、メルカリUSのGMV(流通総額)のグラフです。
私が入ったのが2018年6月で矢印の部分です。その頃から比較すると現在7倍くらいにメルカリUSの流通総額は伸びています。
今は、メルカリUSは月に100億円くらいの売上ですね。
これが1つのマイルストーンでしたので、ようやくクリアしたという感じですね。コロナの巣ごもり需要で一気に伸びました。
メルカリUSのアプリの特徴の1つは、日本のメルカリは、売るためのアプリというよりは、売る人と買う人の双方向のプラットフォームというフリマアプリの形になっていると思いますが、アメリカでは、日本と違って売ることも買うことも両方できるという見せ方があまり浸透しませんでした。
私が入って1年くらいしてから「The Selling App」という形でリブランディングして、今は、「メルカリは売ることができるアプリですよ」というメッセージを全面に押し出しています。もちろん、機能としては買うこともできます。
分かりやすいメッセージに絞ってから、メッセージが統一されて全員が同じ方向を見れたという実感があります。
吉永
メルカリのアプリは日本とアメリカで全然違うのですね。
てっきり同じサービスをそのままアメリカにも展開しているのだと思っていました。
現王園
そうですね。メルカリの日本のアプリとUSのアプリは、見た目も全く違いますし、機能も結構差があったりします。
アメリカでは、現在月間400万人がメルカリのアプリを使っていて、1日35万ほど出品があります。ストアのレビューも高く、アプリのヘビーユーザーは使い続けてくれていますし、PMFは達成してるかなと思います。
【ラ・サール56期 現王園Vol.2】メルカリUS:eBayやFacebookといった大手競合とどう戦っていくか? に続く。