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【ラ・サール56期 吉永vol.2】flixy売却の舞台裏:上場や資金調達ではなくどうしてMAを選択したのか?

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八尾
あと、顧客に集中とありますが、これはどういうことですか?

吉永
これは売れなかった シード期よりは、少し後の話になりますが、競合もどんどん出てきまして、やっぱりプレス出したり、大型資金調達してたりとかすると気になってしまいましたね。

ただ、そこで競合に惑わされて、顧客に視点を向けていないとどんどんずれたサービスになっていくと思いましたので、そこは意識して顧客への提供価値を追求していました。これは、今も変わらないですが。


八尾
冒頭で大きな競合が他に2社ということでしたけれども、それより前にも競合はあって、潰れていったところもあるのですか?


吉永

そうですね。2007年くらいに日本にiPadが入ってきて、その当時から待合室でタブレットで問診ができるというサービスは10社程度あったので、それも含めるとすでに先行者はいましたね。
ただ、クリニックの待合室で記入するので家からは記入ができないのと、電子カルテとの連携が不十分という課題はありました。


八尾
潰れていった会社は、ああ、潰れていったなと思うところもありますか?そういった先行していた会社とメルプの差は何ですか?


吉永
老舗のタブレット問診のところの多くは、患者さんが待合室で問診に記入してもタブレットに問診結果が残っているだけで、それを電子カルテに取り込めないという点ですかね。
結局タブレットを見ながら、医師が電子カルテに問診内容を転記するので、業務効率化になっていないという問題があると思います。

八尾
なるほど。結局、紙で書いていた内容をタブレットにしただけということですね?


吉永
そうですね。ただ、もちろん、タブレット問診メーカーも皆さんその課題を認識していて、各電子カルテメーカーと連携しようと頑張ってはいるのですが、電子カルテも日本で100以上あるので1社1社対応していくのが難しいという点がありますね。

八尾
電子カルテの会社って100社以上あるのですか!?

吉永
そうですね。そして、それぞれのメーカーがデータの送受信の形式が違っていたりするので、各社に合わせてAPI連携しようとするととても大変ですね。
あとは、電子カルテ会社がセキュリティの関係から外部機器との連携を嫌がるんですね。開発費用もかかりますし。
そういう課題がありましたので、メルプでは違うやり方で、少しハック的な方法で電子カルテに問診を取り込むようにしました。

八尾
なるほど。それは、とても面白いですね。

吉永
メルプでは、Bluetoothという近距離通信を使って勝手に問診を電子カルテに送ってしまうという方法をとっています。

八尾
なるほど。100社以上ある電子カルテと普通に連携しようと思うと、彼らのインセンティブや各社との連携の手間を考えるととても難しいので、既存メーカーがタブレットで問診を表示するだけにとどまっていて、結局業務効率化につながっていないということですね。


吉永
そうですね。ただ、この連携の方法も私たちが0から思いついて開発したのではなく、他社が別のシステムでBluetoothで文字情報を送るという技術を使っていたのをたまたま見て着想を得ました。

この仕組みメッチャいいじゃん!これをうちらの問診に取り入れたら、電子カルテとの連携がとても楽になるじゃん!と思って開発しました。

八尾
他社のやり方を参考にしたということですね。なるほど。
少し話が飛びますが、そうしてシード期、アーリー期と進んでいき、実際にサービスが売れるようになってきたなかで売却を考えるようになったのはどうしてですか?


吉永

実は、今回の売却の約1年少し前くらいに、軽い買収の打診はありました。
とはいっても、ガッツリした感じではなく、飲みながら「今後会社はどうしていくつもり?売る予定とかあるの?」といった軽い感じでしたけれども。
そこで、メルプのサービスに興味あるヘルスケアの企業があるんだと意識し始めた感じですね。


八尾
1年前ということは、結構前からそういう話があったんですね。


吉永

そうですね。ただ、そのときは、ちょうどサービスがPMFを達成して、これから自分たちでガンガン伸ばしていこうと思っていたので売却は考えていませんでした。

その後、半年程度経過して、サービス自体は伸びていましたけれども、同時にだんだんと現実を見始めるようになりました。
WEB問診の市場規模は、医療機関が日本で10万件しく、全部は取れないのと、初期10万円、月額15000円で販売していたので、例えば1万件取れたとしても年売上20億くらいにしかならないので、このサービス単体で上場してサービスを伸ばしていくのは頭打ちになってしまうと思い始めました。

さらに、スケールするためには、例えば、問診のデータを活用して製薬会社に提供するなど次の大きなマネタイズが必要だと思いましたが、まだどうやったらそれを達成できるかは描けていませんでした。


八尾
なるほど。自分たちで上場に持っていくには厳しそうという認識があったんですね。
すごく、ロジカルですね。


吉永
少し閉塞感も感じ始めていたこともあると思います。確かに売上は立ち始めていましたが、メルカリみたいな、成功するスタートアップのような二次曲線で売り上げが毎月増えていくような感じではなく、どちらかというとリニアに売り上げが積み上がっていく感じでした。

これは、医療業界という業界の特殊性もあるとは思いますが。電子カルテや予約システムなど類似の医療機関向けに業務システムを売っているところも大体リニアに伸びている感じですね。
一次関数的な伸びをブレイクするだけの営業手法を自分の中で見つけられなかったというのもあります。


八尾
ちなみに、売るぞとなった時に、感情的な思いや創業メンバー間での意見のすり合わせなどの問題はなかったのですか?


吉永
創業メンバー間での意見は比較的すんなりまとまったと思います。
CTOの片岡とは、前回のお薬サービスも含めて8年くらい一緒にサービスをやっていて、また次にもっと大きくグローバルに展開できるようなサービスを作りたいねとは話をしていたので、今回だけで終わりではないというのもありました。


八尾
なるほど。その関係性は確かに。今回で終わりではなく、今後も一緒にやっていく中の区切りの一つという位置付けだったということですね。

吉永
あとは、今回は全部自己資金でやっていて、外部の投資家から資金調達を受けていなかったので、そういう意味では内部の意思決定は創業メンバーの3人だけだったのでとてもやりやすかったです。


八尾
なるほど。その点も、3週間で売却に至ったというスピード感に表れているのですね。
ありがとうございます。では、売るという方向性は決まったとして具体的にどうやって会社を売るのか、初動でどうやって動くのか、また今回一番特徴的だったFA仲介なく自分で交渉に行くという経緯を説明してもらえますか?

【ラサール56期 吉永vol.3】flixy売却の舞台裏:FA介さず3週間でクロージングしたMAの進め方に続く。

 

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